このブログでは放射線技師と第1種放射線取扱主任者の資格を持つ筆者が、放射線系の国家試験や大学のテストに役立つまとめノートを発信しています。
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PET検査まとめ(核医学)
PET検査とは、陽電子放射断撮影法(Positoron Emission Tomography)の略です。
PET装置で観測しているのは消滅放射線
- 18Fなどの陽電子放出核種で標識した薬剤を体内に投与する
- 体内で陽電子が放出され、体内の電子と衝突すると対消滅を起こし、消滅放射線が発生する
- PET装置ではこの0.511MeVのγ線を測定している
PET装置の構造
対向している検出器で同時に放射線を検出する(同時計数回路)
2D収集と3D収集
こちらのサイトに載っている画像が分かりやすいと思います→PET装置とサイクロトロン 向井孝夫 (coocan.jp)
3D収集の特徴:
- 現在はほとんどが3D収集。
- セプタがないため感度は高くなる(2D収集の7~8倍)が、コンプトン散乱線を収集しやすいため、定量性は低下。
- 体軸方向の辺縁で感度が低下する。
2D収集の特徴:
- 定量性が良い。
- 感度が低い。
- 空間分解能が高い。
- n層のリングでは2n-1スライス分の画像が撮像可能。
シンチレータの種類
ーシンチレータに求められる性能ー
・感度が良く、高速性がある=高密度で発光減衰時間が短い
・高エネルギー分解能=発光量が多く発光減衰時間が短い
・無色透明であること。 色付きだと蛍光出力、エネルギー分解能が悪くなる。
PETでは検出エネルギーが比較的高い(0.511MeV)ため、感度が良い、かつ速くエネルギーを検出できる必要がある。
基本的に、半導体検出器の方が性能が良い。
TOF-PET装置
TOFとはTime Of Flightの略で、一対のγ線の検出時間の差を計測することで、直線上で対消滅が発生した位置の情報を得ることができる装置。TOFを用いることでコントラストは向上する。
PET画像ができるまで
PET画像ができるまでには各種補正や画像再構成が必要です。
偶発同時計数と散乱同時計数
PET装置では真の同時計数以外に、画質の低下を招く雑音が含まれています。具体的には、偶発同時計数と散乱同時計数です。
偶発同時計数:
関係のない2つの消滅放射線が同時に観測されること
散乱同時計数:
相互作用により光子の軌道が曲げられて同時に計数されること
画像引用元:PET検査の仕組み(第5回)「誤差要因の補正(1):偶発同時計数と散乱同時計数」 - 知識のサラダボウル
数え落としがないとすると、偶発同時計数は放射能濃度の2乗に比例する。
偶発同時計数の補正:遅延同時計数回路法、シングル計数法
散乱同時計数の補正:DEW法、TEW法、コンボリューション法、シミュレーション法
DEW法:
サブウィンドウを設定し、メインウィンドウに対して散乱線を補正する
TEW法:
高エネルギー側と低エネルギー側の2つのサブウィンドウを設定し、散乱線を補正する
雑音等価係数
PET装置のSN比の評価に使う。
PET検査に使われる核種
ーその他ー
全てβ+壊変。前述のPET検査の原理を考えれば必然。
製造方法:院内サイクロトロン(ただし、18Fのみ半減期が長いため、院外で作られて病院に運ばれてくる場合もある)
国家試験では、半減期は小数点以下まで覚えなくても大丈夫です。上から「20、10、2、110」とテンポ良く覚えましょう。最大エネルギーも大体の値は覚えておいた方が安全です!
PET製剤と用途
13N-NH3:心筋血流量の測定
15O-CO:ヘモグロビン結合
15O-CO2:血流量の測定
15O-O2:脳循環代謝の測定
これらは国試でもたまに聞かれるので、覚えるしかないです。
18F-FDGの検査
適応:早期胃癌を除く悪性腫瘍、てんかん、虚血性心疾患、サルコイドーシス、大型血管炎(高安動脈炎)
投与量:185~370MBq
解析方法:SUV=病変の放射能濃度[Bq/ml]/{投与量[Bq]/体重[g]}
検査前の注意事項:
・薬剤投与前に血糖値を測定
・4時間以上絶食する
・検査前の運動は禁止
・撮影直前に排尿
生理的集積部位:
脳、縦隔、筋肉、胃、肝臓、腸管、腎臓、膀胱、耳下腺、顎下腺
その他、集積してしまう部位:
脳は空腹時に高集積(血糖値が高いと集積が低下)
手術痕や骨の離断部、注射跡の炎症部位、放射線治療後の炎症
SUVとは、投与した薬剤が均一に体内に分布した場合の放射能濃度を1としたとき、組織の単位重量あたりの集積がその何倍にあたるかを示したものです。全身に均一に分布したとき、正常値=1、2.5~3.0程度で異常値となります。
心筋や骨格筋、脂肪はインスリンに対して感受性があるため、血糖値が上がると集積が上昇します。つまり、血糖値が上昇するとそれらの部位への集積により、腫瘍への集積が見にくくなってしまいます。そのため、血糖値を上げないために絶食が必要になります。
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